失語症このページを印刷する - 失語症

担当医師

氏名 役職 専門医・指導医・学位・所属学会 専門分野
金藤 大三 非常勤医師  
下田 光太郎 非常勤医師    

失語症について

脳出血や脳梗塞などの脳血管障害や、脳腫瘍、脳外傷など脳損傷によって起こる障害には、手足の障害の他にことばの障害もあります。その一つが『失語症』です。
失語症とは、「大脳の損傷に由来し、一旦獲得された言語機能が障害される」ことです。

われわれは、日常会話において言語を操作することでコミュニケーションを行っていますが、失語症になると"聴く""話す""読む""書く"といった言語機能の全ての面にさまざまな障害が生じます。

「他人の言うことが理解できない」、「自分の思っているように話せない」、「何が書いてあるのかが理解できない」、「字が書けない」といった状態となるのです。

失語症のタイプ

前述した通り言語には4つの機能がありますが、これらはそれぞれが脳の異なる部分に中枢を持っています。そしてその個々の部位が受ける損傷の影響で、異なる失語症状を呈するので、失語のタイプが分類されます。ここでは特に代表的なタイプについてご紹介します。

《ブローカ失語》

運動性失語とも呼ばれますが、非流暢ですらすらと滑らかに話せないのが特徴です。相手の話すことはある程度理解できますが、喋ろうとするとなかなかことばが出てきません。特にことばのはじめの音が出しにくく苦労します。

《ウェルニッケ失語》

感覚性失語とも呼ばれ、すらすらと流暢に喋れますが、相手の話すことばがよく理解できないタイプです。また患者自身のことばをもよく理解せずに喋るので、きちんとした会話が成立しにくいのも特徴です。例えば「御飯が食べたい」と言いたいところを「机が食べたい」と言ってしまったり、「すべらきのこさい」など、日本語には無いようなことばを言ったりすることがあります。

《伝導失語》

相手の話していることは理解できますが、喋ったり書いたりすると「りんご」が「きんご」や「りんげ」など、ことばに誤りが出てしまうタイプです。また、その誤りに気付いていて、修正しようと正しい音を探索する行動がよくみられます。

《全失語》

相手の言うことばがほとんど理解できず、発話も全くないか、あるいは無意味な一語を発するのみという、全ての言語機能が重篤に障害されたタイプです。

失語症がもたらすもの

このように失語症によっておこる障害は、ことばの障害に留まらず、他者とのコミュニケーションをも困難にします。
そしてコミュニケーション障害によってイライラや不安感など、心理的な問題を生じやすくなります。

また読書や映画鑑賞、俳句やカラオケなど、趣味的活動にも大きく影響を及ぼし、コミュニケーション能力のみならず、生きがいをも奪ってしまうことすらあるのです。

治療

そうした障害を、訓練によって少しでもコミュニケーションしやすい方向へ支援していくのが、言語聴覚士の仕事です。

訓練では日常よく使うことばの絵カード等を使って、ことばの理解や想起、発声を促します。

大切なのは、言語機能の改善のみにこだわるのではなく、コミュニケーション全体の能力の向上をはかり、
生き生きとした生活ができるよう支援していくことにあると考えます。