臨床検査科
臨床検査とは
患者さまから採取された、血液や尿、便などからは、いろいろな情報が詰まっており、検査を通してからだの状態を把握し、病気の原因の追求を行うことが可能になります。これが臨床検査の重要な役割となっております。また臨床検査は病気の診断だけでなく、治療方針を決定する手助けにもなります。私たちの身体から出る色々なサインを確認するために診察がおこなわれ、それを確かめるために臨床検査がおこなわれます。
概要
当院で現在行っている検査には生化学検査、免疫検査、血液検査、一般検査(尿検査)、微生物検査、生理検査があります。その中で特に精神疾患、神経筋疾患、重症心身障害、結核医療に関係した医療の充実を図っています。
臨床検査科長 (副院長兼任) | 赤星 進二郞 |
---|---|
臨床検査技師長 | 平井 克典 |
副臨床検査技師長 | 松本 学 |
スタッフ | 他3 名 |
※睡眠検査認定技師2名
臨床検査科 理念
検査科では下記の理念を基に検査科の運営を行っています。
- 患者様の目線に立ち、エビデンスに基づいた正確で迅速な検査データの提供
- 良質な医療人の育成
- 効率的かつ効果的な業務運営の確立
検体検査室
検体検査室(生化学検査室・血液検査室)では、患者さまの体から採取した検体(血清・血液など)の成分を化学的に分析し、診療側(医師)へ迅速かつ正確に提供することによって、疾患の予防・診断・治療のサポートを行 い、疾患の原因や病態の解明に役立てることを目的としています。
検査としては、化学分析測定、血球算定、血液像、凝固系検査、化学発光による感染症・腫瘍マーカー・甲状腺の免疫血清検査などを行っています。
血液・凝固検査
患者さまから得られた血液検体を、血液自動分析装置で測定しています。貧血や白血病などの血液疾患や、炎症の状態がわかる血球数(白血球数、赤血球数など)を測定します。 その他に検査技師の目で白血球や赤血球の形態を顕微鏡で見る血液像があります。血液がどの程度で固まるかを調べる凝固・線溶系検査も行っています。
一般検査
ここでは、尿、糞便・穿刺液などの検査を行っています。これらの検査は、機械化が進んでいますが、自動分析装置では判定できない尿中有形成分については技師が顕微鏡的に再確認を行っています。
半自動尿化学分析装置クリニテック アドバンタス
定性試験とは、
尿の糖や蛋白、ビリルビン、ウロビリノーゲン、尿の潜血反応、ケトン、PH、白血球、亜硝酸塩などの有無を調べています。一部診療科ではこれで診察をする場合もありますが、ほとんどの診療科ではもっと詳しく定量的に測定します。(これを定量試験と呼びます)
定量試験とは、
尿を遠心沈殿器にかけて、尿の中に含まれる有形成分(細胞など)を集めて(これを尿沈渣と呼びます)顕微鏡で観察します。これらの結果で、腎臓の機能、膀胱の状態、肝臓の機能などをある程度知ることが出来ます。
便検査
糞便の中の血液成分(ヘモグロビン)を検査することにより、大腸癌のスクリーニングを行います。また、寄生虫の検査も行っています。
生化学・免疫検査
採血した血液を遠心分離し、その上清を検体として自動分析機器を用い、化学的な物質(酵素・ミネラル・糖や脂質、さらには無機イオンや蛋白質など)について調べています。
免疫血清では、抗原抗体反応(免疫反応)の原理を利用した検査法で感染症・腫瘍マーカー、ホルモン、甲状腺等について調べています。
生化学ではおよそ15分程度、免疫検査では30 分程度で測定結果が得られます。また夜間休日における緊急検査にも対応し、NST などのチーム医療にも参画しながら、迅速で正確なデータを提供し、診療支援の一翼を担っています。
鳥取医療センタ-臨床検査科では、医師が患者様の病状の把握をするため、 肝機能検査・腎機能検査・血液検査・尿一般検査などさまざまな検査を実施しています。
薬物血中濃度測定について
その中で患者様からこのようなお問い合わせがありましたのでご紹介します。
Q .薬物血中濃度の測定ってどんな検査ですか?
A.お薬は、病気の「治療」に使われています。
しかし、時には症状が悪くなったり、「副作用」という形で思わぬ症状を起こしたりすることがあります。
それは患者様の年齢・体重などの違いや、病状(体調)など体の変化によって治療に 必要なお薬のバランスがとれていないためです。
そのため、お薬が体にどれくらい貯まっているのかを調べる検査が「薬物血中濃度の測定」となります。
この検査の結果をもとに医師が患者様の状態に合ったお薬の量を決めているのです。
当院では以下の項目の薬物血中濃度測定を迅速に行っています。
- リチウム
- フェニトイン
- フェノバルビタール
- バルプロ酸
- カルバマゼピン
- 外注検査(プリミドン、ジゴキシン、ハロペリドール)
微生物検査室
我々の身体には多くの微生物(常在菌)がいます。しかし、発熱や腫れなどの症状が現れた場合には、常在菌とは異なる菌が身体に感染している可能性があります。細菌検査室では、患者さまから採取した材料を用いて「どのような菌が原因で病気の起因になっているのか?」、「どのような治療薬が有効なのか?」などについて検査しています。また、薬剤耐性菌や院内感染の原因となる可能性のある細菌の出現に注意を払い、ICT(感染制御チーム、Infection Control Team)と協力し病院内感染管理に役立つ情報をいち早く提供する役割も担っています。
微生物検査方法:微生物検査は概ね以下のような手順で検査が進められます。
1.塗抹検査
採取した検査材料をスライドグラスに塗布し、グラム染色という方法で細菌を染色し顕微鏡で拡大して観察する検査です。本来ならば無菌である材料(血液や髄液など)に細菌がいないか、感染症の原因と推測される細菌はいないかなど、染色性と形態によってわかる情報を迅速に報告します。
2.培養検査
患者さんから採取した検査材料中にどのような細菌が存在するのか、塗抹検査で確認された細菌の種類を知るために実施する検査です。
細菌が発育するために十分な栄養を含む寒天培地に、検査材料を接種します。適切な環境で培養を行うと、約1~2 日で寒天培地上に目に見える形(コロニー)となって細菌が発育してきます。
3.同定検査
マイクロスキャン WalkAway
同定検査とは、寒天培養で発育したコロニーを用いて、細菌性状を確認し、細菌の名前を調べる検査です
4.薬剤感受性検査
薬剤感受性検査とは、同定された細菌に対して、どのような抗菌薬が効くのかを調べる検査です。
原因菌に対し有効な抗菌薬、無効な抗菌薬を調べることにより、より適切な治療薬の選択が可能になります
5.迅速検査
微生物培養検査と比べて操作が簡便で、1 時間以内に判定可能な迅速検査も行っています。当院で行っている主な迅速検査は以下に示します。
- インフルエンザ抗原
- 便中アデノウイルス抗原
- 咽頭マイコプラズマ肺炎抗原
- 喀痰中肺炎球菌細胞壁抗原
- 尿中肺炎球菌抗原
- 尿中レジオネラ抗原
- クロストリジウム・ディフィシル毒素
- 便ノロウイルス抗原
- 新型コロナウイルス抗原定性検査
6.PCR検査
“PCR検査”は、新型コロナウイルス(COVID-19)などに代表されるウイルスに感染しているかどうかを判別する検査です。PCR検査は遺伝子検査の一つであり、迅速かつ正確にウイルスの有無を把握することができます。
全自動遺伝子解析装置 GENECUBE
7.血液培養検査
血液培養とは、患者さんの血液を液体培地に入れて、35℃で数日間培養することです。血液中に微生物がいるかどうかを調べることができます。
全自動血液培養装置 バーサトレック 96
抗酸菌検査室
現在、塗抹検査以外は外注検査となっています。
輸血検査室
輸血検査とは
他人の血液を自分に輸血する行為は、免疫反応などの副作用があり安易に行う事はできません。輸血の目的は、血液成分の欠乏あるいは機能不全により異常な症状を認める時に、その成分を補充して症状の軽減を図ることになります。
使用する製剤には大きく分けて、赤血球製剤・血漿製剤・血小板製剤があり、これらは全て供血者から採血された血液及びその成分です。目的に応じた製剤を必要な量だけ補充することが、患者さまにとって安全な輸血と考えます。
輸血に関する検査
血液型検査
A型、B型、O型、AB型、Rh型など、患者さまに輸血を前提として、どういう血液を準備するかの検査を行なっています。
不規則抗体検査
血液型以外の輸血副作用を起こす抗体の有無を調べます。
交差適合試験
供血者と受血者の血液を反応させて、適合するかどうかの検査を行います。
輸血療法委員会
輸血検査室では輸血療法委員会と協力し、以下のことを行い、血液製剤の適正使用と輸血療法の安全性の向上に努めています。
生理検査室
心電図・超音波など患者様の身体シグナルを直接調べる検査を一般に生理検査(生理機能検査)と言います。
頸部エコー検査(検査時間 20~30 分)
検査部位(頸動脈)の診断に役立ちます。超音波を用いて首の血管の様子や血液の流れを調べる検査です。※場合によっては予約や絶食が必要になります。
心電図検査(検査時間 5分)
不整脈や心疾患を調べる検査です。
体表からmV単位の微小な心臓の電気的興奮を記録することで心臓の筋肉の異常や不整脈等を調べます。
ホルター心電図(検査時間 15 分(取り付け時間))
小型の心電計を装着して24 時間心電図を記録します。装着している間入浴はできません。入院の必要はなく普段の生活を送って頂けます。翌日は取り外すために来院が必要です。
肺機能検査(検査時間 15 分)
息切れ、呼吸困難、痰が出るなど、肺の病気が考えられる時に行います。肺活量、%肺活量、努力性肺活量、1 秒量、1 秒率、1 回換気量、残気量などを調べます。
肺の病気の診断、重症度などを調べるのに役立ち、治療効果の測定にも使われます。
光トポグラフィー検査
うつ病診断補助検査として実施する検査です。
詳しくは、光トポグラフィーを用いた「うつ病診断」のページをご覧下さい。
NAP(日中ポリグラフィ)
睡眠外来初診時のスクリーニングと終夜PSG に慣れてもらうための検査です。
MSLT(睡眠潜時反復検査)
昼間の眠気を客観的に評価するための検査です。
脳波検査(検査時間 1 時間30 分)
脳から発せられる微量電気的な信号を記録することで、てんかんや意識障害等を調べる検査です
睡眠時無呼吸検査(PSG)(検査時間 自宅または一泊入院)
一泊入院が必要な検査になります。
睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に正常の半分以下の呼吸しかしていない低呼吸の状態や10秒以上呼吸停止している状態)
詳しくは、「PSG(終夜睡眠ポリグラフィ)ページ」をご覧ください。
誘発筋電図検査/脳誘発電位検査/筋電図(針筋電図)
日本光電 ニューロパック8 ●誘発筋電図検査
末梢神経を電気刺激した時に、神経やその支配筋から発生する活動電位を測定するものです。
主に末梢神経の機能評価に用いられます
代表的な検査項目
※NCS(神経伝導検査)運動神経・感覚神経
●脳誘発電位検査
末梢神経、脊髄、脳を通る感覚神経、聴力、脳幹、視神経の検査を行います。
代表的な検査項目
※MEP(運動誘発電位)
※ABR(聴性脳幹反応)
※VEP(視覚誘発電位)
●筋電図(針筋電図)
睡眠検査
フィリップス アクティグラフィー2
アクティグラフィー(活動量測定検査)
客観的に睡眠状態を判定するための簡易検査です。